人間には自律神経と呼ばれる自らの意思とは関係なく働く神経が備わっており、正常な生命活動を維持するために働いています。
この自律神経は、興奮状態で活発になる交感神経とリラックス状態で活発になる副交感神経の2種類の神経で成り立っているのですが、何らかの原因で交感神経と副交感神経のバランスが乱れると身体に様々な不調が生じます。
自律神経のバランスが乱れて様々な不調が生じた状態は自律神経失調症と呼ばれていますが、この疾患は男性よりも女性に多い傾向があります。
自律神経失調症の原因とは?
自律神経のバランスは、生活リズムや食生活の乱れ、過度なストレス、環境の変化などによって引き起こされますが、ホルモンバランスの変化も原因のひとつです。
女性は妊娠や閉経などにより女性ホルモンバランスに変化が起こりますが、女性ホルモンは脳の視床下部と呼ばれる部位から脳下垂体を通じて卵巣で分泌されます。視床下部は女性ホルモンの分泌だけでなく、自律神経をコントロールするという役割を担っているため、女性ホルモンの分泌に乱れが生じると自律神経のバランスも乱れやすくなります。
これが男性よりも女性が発症しやすい理由となりますが、特に50代以降の更年期の女性は自律神経に乱れが生じやすいため注意が必要です。
自律神経失調症の症状とは?
自律神経失調症の症状は多岐にわたり、現れる症状や程度には個人差が大きいのですが、代表的な症状としては頭痛・めまい・ふらつき・のぼせ・冷え・耳鳴り・動悸・倦怠感・肩こり・食欲不振・口の渇き・便秘・下痢・生理不順・頻尿・残尿・多汗などが挙げられます。
これらの症状が別々に現れることもあれば、複数の症状が同時に発生するケースもあります。また、身体的な症状のみならず、イライラ感・不安・不眠・抑うつ・記憶力や集中力の低下・感情の起伏が激しくなるといった精神的な症状が現れるケースも少なくありません。
セルフチェックで状態を知ろう!
もしかしたら自律神経失調症かもしれないと心配な方は、以下の項目でセルフチェックしてみましょう。
- 頭痛・めまい・たちくらみが頻繁に起こる。
- しばしば動悸を感じる。
- 便秘や下痢を繰り返すことが多い。
- たびたび手や足のしびれを感じる。
- 急に胸が苦しくなったり息苦しくなったりする。
- 胸やけや胃もたれなどにより食欲不振に陥ることが多い。
- 風邪などの体調不良を起こしやすくなった。
- 十分な睡眠時間を確保していても目覚めたときに疲労感や倦怠感を感じる。
- 寝つきが悪く、夜中に目覚めると再び眠ることが難しい。
- 憂鬱な気持ちになって何もやる気が起こらない。
- 悪夢を見てうなされたり、金縛りにあったりする頻度が多い。
- 些細なことでイライラすることが増えた。
上記の項目に当てはまる方は、自律神経のバランスに乱れが生じている可能性があります。特に、更年期の方や妊娠・授乳中の方、月経前後の方はホルモンバランスの乱れによって自律神経失調症に陥りやすいので注意が必要です。
また、男性も几帳面・神経質・責任感が強い・対人関係の悩みがある・ストレスや疲労を抱えているといった方は自律神経のバランスが乱れやすいので注意しましょう。
なお、自律神経失調症に似た症状が現れる疾患も数多くあるので、セルフチェックだけで判断するのは危険です。自律神経失調症の診断には高い専門知識が求められるので、少しでも発症が疑われる場合は早めに医療機関を受診することをおすすめします。その場合、診療科は最もつらい症状に合わせて選ぶことが大切です。
例えば、精神症状が強い場合は心療内科、動悸などの胸部症状が強い場合は循環器内科、下痢や便秘などの腹部症状が強い場合は消化器内科を受診するのがおすすめです。どの診療科を受診すべきな迷った場合は、メンタルヘルスを専門に扱う心療内科や精神科を受診すると良いでしょう。